劇団プレステージの先輩・後輩の関係であり、同郷出身でもある向野章太郎と株元英彰。年齢差は8歳ながらも、俳優の先輩は向野、サッカーの先輩は株元という立ち位置だ。2人には、仕事をより輝かせるための“本気の趣味”、フットボールがある──。
なお本記事は、Football Culture Magazin ROOTS Vol.08(2016年3月発行)に掲載された内容をお届けします。
Text by Kohei KIKUCHI
Photo by Yoshinobu HONDA
サッカーを始めたのは小学生の頃。幼馴染にボールの蹴り方を教えてもらい興味を持った。その幼馴染は現在、東福岡高校サッカー部でコーチを務めているという。
ボールとの出会いは人並みだったが、それからサッカーを極めるという道には進まず、学生時代はサッカー部ではなく野球部やバスケ部に所属していた。蹴る機会といえば、部活後にサッカー部に混ぜてもらったりするくらい。それから時が経ち、社会人時代には、地元・福岡で草サッカーをしていたが、そこでも半年に数回蹴る程度だった。当然、経験者とやるなかでは動き方もよく分からず、そんな理由から、前線で張るFWが主戦場となっていた。
役者を目指し、25歳のときに上京。そこでDragonAshのBOTSや降谷建志が結成したチーム「FELLOWS」に誘われ、これまでよりも定期的にボールを蹴るようになった。「自分だけ経験者ではないなかに混ぜてもらえて、教わることも多い。少しずつだけど確実にステップアップしていく感じが楽しい」。サッカーをすることで前向きになれた。
そしてこの感覚は、本業に通じることでもある。そもそも26歳のときにツテを頼って現在所属事務所のアミューズに面接に行くものの、年齢的な理由から門前払いを受けた。それでも運良く、舞台の裏方の3カ月のアルバイトを斡旋してもらい、その期限の終わりとともに、プロデューサーにやる気を見込まれ、まさに“拾ってもらった”。もともと経験があるわけではなく、ゼロからのスタート。サッカーと同じように、一歩ずつ確実に成長していった。
今は、“ちょっと動けない元サッカー部”と思われていることも多い。今後の目標は「章太郎さん、絶対サッカー部出身でしょ!」と言われること。そのために日々、必死に走る。向野にとってのサッカーは、無心になれる大切な瞬間だ。
こうの・しょうたろう
1977年9月5日生まれ、福岡県出身。25歳のときに俳優を志して上京。04年にアミューズ新人開発部門に創設された若手養成機関プレステージ(現・劇団プレステージ)に所属し、俳優としての経験を積んだ。ドラマ、映画、舞台など出演作は多岐にわたる。
兄の影響を受けて小学生のときにクラブチームでサッカーを始めた。それからサッカーに没頭していくが、高校1年生で自身の立ち位置を悟る。「年代別代表の選手と接して、自分はプロになるレベルじゃないと痛感した」。それでも、高校最後の大会で“サッカーエリート”に一矢報いる瞬間があった。全国大会を懸けた決勝戦でアビスパ福岡ユースと戦い、ギリギリまで追い詰めた。最後は逆転を許したものの、世代最高峰の相手にあと一歩まで迫っての九州大会ベスト4は、胸を張れる成績だった。
事務所に所属することが決まり、大学入学と同時に福岡から上京。役者という新しい夢に向かって、レッスンやアルバイトに明け暮れた。そんなあるとき、スキマスイッチの常田真太郎との出会いがきっかけで、再び大好きなサッカーをプレーする機会が増えていく。「仕事以外で、何かに無我夢中で、本気になれるのはこれしかない」。そもそも、高校時代も何度も退場してしまうくらい、負けず嫌いで、熱くなるタイプ。大人になってからも、常にガチンコでサッカーと向き合ってきた。「自分が得意なサッカーでは、やっぱり負けたくない」。
俳優を選んだのは、「地元で影響力がある人になりたい」という思いから。そうした地元愛をカタチにする術として、アビスパ福岡の前座試合でサッカーをして、福岡を盛り上げることも目標の一つ。
主役はもちろん、嫌いではない。ただ、脇役として輝くことの面白さも理解している。「ずっとサイドバックだったし、FWほど注目されないなかで、相手を完璧に抑えたときのやりがいを感じていた。それと同じように、舞台の傍で一つ笑いを誘ったりするときの感覚が好き」。サッカーともリンクするような俳優業の面白味を知り、株元は一歩ずつ、階段を登っている。
かぶもと・ひであき
1989年4月27日生まれ、福岡県出身。高校までサッカーを続け、卒業とともに上京、アミューズに所属し08年から俳優業をスタート。向野の同郷の後輩であり、劇団プレステージでもともに活動する。舞台をメインに、テレビドラマなど、活動の幅を広げている。
劇団プレステージとは……
「より多くの人たちにエンターテイメントを通じて感動を届けたい」。そんな熱い想いを胸に秘めた、アミューズ所属の俳優20名で構成。7年間、キャパ100席足らずの小劇場で公演を重ね、2012年からは「CBGKシブゲキ!!」に本公演の拠点を移し、2015年8月には第10回公演『Have a goodtime?』で劇団初の大阪公演を敢行。東京公演では新宿「紀伊國屋サザンシアター」に初進出し、合計5000人を動員!
舞台活動以外にも、tvk(テレビ神奈川)で地上波のレギュラー番組『銀の劇プレ』の放送、動画メディア『ストラボ東京』でレギュラー出演する企画・構成も担当し、12月には“寝たら自腹”という制限付きで『24時間耐久大忘年会』の配信を敢行。2015年秋には、ライブ会場「豊洲PIT」にて生バンドを入れ、過去作品の楽曲の歌唱、パフォーマンスを披露するイベント『Prestage Party at PIT~てんやわんやの大感謝祭~』を開催。さらに12月に、オリジナル楽曲6曲に加え、劇団が運営するスペシャルファンサイトへのアクセスコード付きのミニアルバム『P1(ピーワン)』も発売した。2016年2月には、お笑い芸人NON STYLEの石田明さんの脚本で、番外公演『君のそばにいたいのに』を開催。連日大盛況のうちに終了した。オフィシャルHPをチェック!
http://amuse-gekipre.com
向野章太郎 出演公演
演劇集団イヌッコロ×ACTOLI×シザーブリッツ
トリプルコラボ公演 第2弾
『オタッカーズ・ハイ』
■公演期間:2016年6月7日(火)〜19日(日)
■劇場:小劇場B1
(東京都世田谷区北沢2-8-18 北沢タウンホール地下1階)
■出演:
川隅美慎/鎌苅健太/桑野晃輔/沢井美優/加藤良輔/磯貝龍虎
Wキャスト
福山聖二/向野章太郎/城築創/月岡弘一/牧田雄一 ほか
■脚本:羽仁修
■演出:伊藤陽佑
■キャスティング・脚色:柳川由起子(共同テレビ)
■プロデューサー:ウネバサミ一輝
■チケット発売日:
[先行プレミアム]
2016年3月26日(土)10:00~4月3日(日)23:59
[一般]
2016年4月16日(土)10:00~
※専用予約フォームにて申込み(対象:全キャスト)
■料金:
[先行プレミアム]
6000円(全席指定/1人3枚4公演まで)
※各公演異なる、直筆サイン入り生写真+共通メイキングDVD付き
[一般/当日]
4500円(全席指定)
詳細はシザーブリッツHPまで
http://www.scissors-blitz.com/
菊池康平(きくち・こうへい)
1982年7月27日生まれ、兵庫県出身。プロサッカー選手を目指して学生時代と会社員時代の夏期休暇などを利用し12カ国に挑戦。会社を1年休んで挑んだ13カ国目のボリビアでプロ契約を果たす。飛び込みで現地のチームと交渉し、テストを受ける道場破りスタイルを得意とする。2014年6月に再度プロ選手になるため、9年間勤めた会社を辞めて海外へ渡るも、ラオスで犬に襲われ緊急帰国。その後もインドで何かに噛まれて入院し、またも志半ばで帰国。日本ではアーティストの友人たちと結成した「危険なカオリ」というフットサルチームの幹事を務める。