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2016年04月12日

10周年を迎えるFリーグの日程が決定。
アニバーサリー・シーズンのテーマは
「日本フットサルの再建」(小倉純二FリーグCOO)

4月7日にSuperSports XEBIO Fリーグ2016/2017の日程発表会見が開かれ、6月11日に開幕する新シーズンの全日程が明らかになった。2007年のリーグ創設から10周年を迎える今年は同時にワールドカップイヤーでもあり、当初は9月に行われるフットサルW杯を踏まえた日程が組まれていたが、日本代表がその出場権を逃したことで変更を余儀なくされた。決して明るい材料がそろってるとは言えない新シーズンを迎えるにあたり、フットサル界は今シーズン、Fリーグ最高執行責任者(COO)に小倉純二氏、フットサル委員長に北澤豪氏を任命し、「再建」を図ることとなる。果たして、日本フットサル界は、どんな再建プランに基づき、どんな道筋を歩んでいくのだろうか──。

Text and Photo by Yoshinobu HONDA

文=本田好伸

名古屋10連覇の可能性は高くない?

 今年も、ゼビオグループがエクゼクティブパートナーとしてリーグをバックアップしていくこととなる。SuperSports XEBIO Fリーグ2016/2017は昨年と同様、12クラブによって全33節198試合が争われ、レギュラーシーズンを経て、上位5チームによるプレーオフを行い、優勝チームが決まる。最大のトピックとしては、現在9連覇中の名古屋オーシャンズが“V10”を達成するのか、もしくは別のチームが初めてリーグタイトルをつかむのかというところだろう。その点において、今シーズンはこれまで以上の変革が起きる可能性をはらんでいる。その理由はいくつか挙げられるが、一つは、名古屋はこの9シーズンにわたって常にエースとして君臨してきた森岡薫が退団し、チーム内のパワーバランスが変化することにある。また、これまでは眞境名オスカー、館山マリオ、アジウ、ビクトル・アコスタと、実績を持つ監督がチームを率いてきたが、今年は昨シーズンまで名古屋に所属したペドロ・コスタが監督に就任。“フットサルの教科書”と称されるほどに卓越したフットサルのノウハウを体現してきた選手だが、指導者としての実績は未知数だ。また、現時点の大型補強はシノエというブラジル代表のゴールゲッターの加入のみであり、そうした要素を加味する限りでは、これまで以上に不安定なシーズンとなる可能性も少なくないと言える。一方で、先の全日本選手権で名古屋を破って初優勝を果たしてペスカドーラ町田は、渦中にあった森岡を獲得し、タイトル奪取を虎視眈々と狙っている。その他、詳細な展望はここでは割愛するが、今シーズンは何やら一波乱がありそうだという点で、注目度は高い。

Fリーグはフットサル界を再建する重要なリーグ

 小倉COOは会見で、「今年はFリーグ10周年になるが、そういう節目に輝かしい大会(W杯)を戦っていたはずが出場を逃し、そういう意味では日本のフットサルを再建する非常に重要なリーグになる」と語っている。そこで、「再建」という今シーズンのキーワードについて考えてみる。

 まず日程面に関しては、Fリーグの渡辺真人総務主事が会見の場で説明したところによると、「ワールドカップに出場する前提でカレンダーを組んでいたので、先ほどの実行委員会を経て、ようやく最新のスケジュールを発表できる」ということだった。当初、8月14日の第11節から約2カ月にわたってリーグは中断する予定だったが、その期間も試合が組まれることになった。該当するのは8月26日から28日の第12節、9月3日から4日の第13節のセントラル開催ということになる。そこから約1カ月は、現行通り中断期間となる。また、7月にタイで開催されるAFCフットサルクラブ選手権に名古屋が出場することもあり、「Fリーグ全体で、W杯に出られない悔しさを晴らそうと、名古屋になんとか優勝してもらおうと、7月3週目を1節空けることになった」。ただしこうした措置はあるものの、リーグの様相は過去のシーズンと何ら変わらない。スポンサーという点においても、三井住友カード株式会社が新たに加わった以外では、昨シーズンを踏襲している。では再建のポイントはどこにあるのか。

 それは「10周年記念行事」ということだろう。渡辺総務主事が、「W杯出場をを前提にカレンダーを組んでいたためカップ戦の開催はないが、代わりに10周年記念行事を開催する。まだ具体的にはまとまっていないが、これから調整して関係者の皆様に発表する」としている。またこの件については、記者の「オールスターマッチの開催もあるのか」との問いに、小倉COOが「そういう方向で話を進めてていくと思う。期待してもらいたい」と自信をのぞかせた。

 とはいえ、W杯出場を逃すという日本フットサル界にとって軌道修正を余儀なくされる事態にあって、それから約2カ月後の現時点で、大きな期待感をあおる「再建プラン」を打ち出せていないのは、やや後ろ向きな事態だとも言える。情報解禁に慎重にならざるをえないことも考慮すべきだが、それよりも情報をオープンにし、フットサル界全体で再建へと向かうベクトルをそろえ、アイデアを詰めていく姿勢こそ、現状には必要なことなのではないかとも感じている。いずれにせよ、「アジアのなかでなんとか成長させようと努力してきたが、残念ながら一歩後退」(小倉COO)という現在地を踏まえれば、「例年並み」の施策では足りないことは周知の事実だろう。今後のFリーグの動向に注視したいところだ。

2020年に向けた中期計画こそが重要

 Fリーグは今年、ようやく法人化へ向けた作業も進めていくというが、“再建プロジェクト”はひとまず2020年に向けた中期的な道筋を描く必要もある。というのは、3月に、愛知県が正式に2020年のフットサルワールドカップの招致に向けた申請を、日本サッカー協会(JFA)を通じて国際サッカー連盟(FIFA)に提出したからだ。今後はFIFAに対して改めて構想概要を提出し、FIFAによる開催地調査、理事会の決議によって年内に開催地が決定する。

 フットサルワールドカップ招致に関する世界の情報を知る機会は多くはなく、これまでライバル国の存在を正確にする機会はなかったが、4月5日にFIFAが立候補国を明らかにした。それによると次回ワールドカップの開催地である南米連盟(コロンビア)を除く5大陸から、13カ国もの申請があったという。日本がW杯出場を逃したという事実とも相まって、現状の大会招致への可能性が決して楽観視できるレベルのものではないことは容易に想像がつく。小倉COOも、Fリーグ日程発表会見の場で、「他国は相当に手強い。(前回大会はアジア連盟の)タイ、コロンビアに続いて、(アジア連盟の)日本に戻ることは簡単なことではなく、どんな大会を日本で開きたいかという提案が非常に重要になる」と危機感を抱いている。

 2002年から11年までFIFA、およびアジアサッカー連盟(AFC)の理事を務めてきた小倉氏のバックアップは不可欠であり、その点において、現在JFA最高顧問である小倉氏を新COOに擁立したことは無関係ではないだろう。

 また、そうした現状があるからこそ、Fリーグの存在がより一層、重要なものになる。フットサル委員長に就任した北澤氏も、「新たに2020年に世界の頂点に立つことを設定して皆さんと一緒にそこを目指していきたい。そのためにはFリーグが充実すること、そしてたくさんの皆さんに支援していただくことが必要になってくる」と提言する。

 「再建」というキーワードを掲げたFリーグ、ひいては日本フットサル界は今年、どんな道程を歩んでいくのか。関わる多くの人にとって他人事ではないシーズンはもう、始まっている。

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http://www.fleague.jp





本田好伸(ほんだ・よしのぶ)

1984年10月31日生まれ、山梨県出身。 日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)

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