AFCフットサル選手権  アジア選手権  タシュケントの悲劇  ドーハの悲劇  パンコラ  フットサル  ワールドカップ  加藤未央  日本代表 
2016年02月28日

副編集長・加藤未央のコラム
『パンツを右足から穿くように』
「未来のために語るべきこと」

副編集長・加藤未央が自ら筆を取る本コラム、その名も『パンツを右足から穿くように』。日本サッカー界が忘れることはない記憶、「ドーハの悲劇」。1993年、夢に見たワールドカップ初出場を逃した、日本中が失意にかられた出来事だ。時は経ち2016年、日本フットサル界はそれとよく似た、おそらくきっと、この先忘れることはない記憶を胸に刻んだ。「タシュケントの悲劇」──。日本がアジアの王位を失い、そして同時に、W杯出場権を逃した。フットサルに携わるすべての人が肩を落とした出来事だ。そんな今だからこそ、未来のために語るべきことがある。加藤未央が先陣を切って、発信しなければならないことを綴る。

Text by Mio KATO

文=加藤未央

 2016年2月18日、フットサル日本代表が今年の9月に開幕するワールドカップ・コロンビア大会の出場を逃した結果を受けてから、刻々と時間が過ぎている。

 一点の曇りなく、出場をすると思い込んで今年度のフットサル日本代表、そしてFリーグの計画を練っていた私は、その衝撃的な事実を受け入れるのに自分の考えの甘さを悔いながら、なかなか心の整理が付かないでいた。たぶんきっと、多くのフットサルメディアに関わる人たちがそうだったと思う。

 先日、現地ウズベキスタンに取材で行かれていた記者・河合拓さんの「日本フットサル界が失った大きなもの 『経験不足』露呈でW杯出場を逃す」を、NewsPicksにて拝見し、その記事のコメント欄に、私の思いを綴った。私のコメントは以下の通りである。

W杯の出場を逃したキルギス戦後、フットサル日本代表を7年率いているミゲル監督は会見で「これが日本代表を率いるラストマッチ」と、辞任表明とも解釈できるコメントを発表した。
ところが5日後の2月23日、代表の帰国を待ち構えた記者に対してミゲル監督は「今回のAFCフットサル選手権では監督として日本代表を率いるのが最後」という意味だと弁明したという。続投できるのならその意思はあり、今後日本サッカー協会と話し合いをして去就が決定されるということだ。

さて、ここまでのニュースで普通に考えて不思議に思うことがある。それは、日本サッカー協会から正式なコメント、また今回の結果について何もコメントが出ていない、ということだ。

もっといえば、ベスト4が懸かったベトナム戦で、延長戦でも決着がつかずにPK戦へともつれこんだ時のこと。日本のキッカー1人目は森岡薫選手。シュートは間違いなく枠を超えていたにも関わらず、ノーゴール判定だった。

「たら、れば」を言ったらキリがないけれど、あえて言うならこのジャッジがミスジャッジじゃなかったら、日本代表の運命は変わっていたかもしれない。でもこの判定に対して、選手は「え!? なぜ?」というリアクションはしたものの、抗議はせずに続くPKへと気持ちを切り替えた。

試合中、選手は審判のいかなる判定も受け入れなければいけない。それに代わって監督が抗議をしたりする場面も見られるけれど、こういった国際試合で誰が本来抗議をするべきか、改めて審判のジャッジの質を問題提起すべきか……というと、その国のサッカー協会だと私は思う。選手や監督の声を、彼らを守りながら代弁するのは協会の仕事だと思っている。

W杯出場を逃した今、ミゲル監督のことも然り、森岡選手のPKのことも然り、「Road to COLOMBIA」とうたってW杯を盛り上げていた日本サッカー協会からのコメントがまだ出て言いないという違和感は拭い切れない。

まさかとは思うけれど、会長選挙の結果によって動きがあるかもしれない自分の去就でコメントどころじゃないのだろうか……と勘ぐってしまうのは、私がひねくれているからだろう。

 ──これが、私の今の思いである。

 河合さんの記事にもあるように、代表の今回の結果を受けて検証する作業は間違いなく必要だ。帰国した日本代表を成田空港で待ち構えて取材した本田編集長のインタビュー記事(FutsalEDGE掲載)にある選手の思いは、多くのフットサルファンが共有すべきことだと思う。そして、メディアとして楽観視していた私自身が多いに反省する部分も忘れてはいけない。

 全日本フットサル選手権を目前に今回の敗戦を受けて公式に発表されたものは、Fリーグの公式HPにていまだW杯を逃したという“たった4行の”ニュースリリースしかない。自身の去就について触れたミゲル監督のコメントも、宙に浮いたままである。私の気持ちもまだ着地点が見付かっていない。
 いろんなものが宙に浮いたまま、全日本フットサル選手権の始まる3月4日を迎えるのだろうか。
 日本のフットサルを引っ張るリーダーは一体、誰なのだろうか。





加藤未央(かとう・みお)

1984年1月19日生まれ、神奈川県出身。 2001年に「ミスマガジン」でグランプリを獲得し、05年には芸能人女子フットサルチームにも所属。07年から09年まで「スーパーサッカー」(TBS)、09年から15年まで「スカパー!」 のサッカー情報番組「UEFA Champions League Highlight」のアシスタントを務め、Jリーグや海外サッカーへの知識を深めた。現在は、ラジオ番組「宮澤ミシェル・サッカー倶楽部」などにも出演し、フットサル専門誌「フットサルナビ」でも連載中。15年4月からオフィシャルブログ「みお線」もスタートした。http://ameblo.jp/mio-ka10/

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