1月17日に学生団体WorldFutが主催する男女ミックスフットサル大会が行われた。彼らは「サッカー×国際協力」を理念に据え、これまでカンボジアへの積極的な支援を行ってきた。そうした活動を通じてリアルなものとして感じた「サッカーの魅力」を伝えるために、今回のイベントを企画。「融和」をテーマに、初めて交流する男女でも楽しめる一体感のある空間を創り出すべく、様々な催しも用意されていた。WorldFutの思いが詰まったイベントの潜入レポートをお届けする。
text and photo by Tsukasa YAMAGISHI
文=山岸典2016年1月17日、フットサルポイントJ-Foot浦和美園で学生団体WorldFutが主催する男女ミックスフットサル大会が開催された。同団体は「サッカー×国際協力」をテーマに活動を続け、サッカーボールの寄付や校舎の建設など、09年からカンボジアのスマオン村への継続的な支援を行っている。
15年9月にはそのスマオン村でワールドカップアジア2次予選「日本代表vsカンボジア代表」のパブリックビューイングを開催するなど、大規模なプロジェクトを成功させている。その活動に参加したWorldFutのメンバーたちは、「ボール一つで言葉の壁を越えられる」、「サッカーは男女関係なく、誰しもが一緒に楽しめる」といったことを再確認し、サッカーの魅力を肌で感じてきた。
そして、「現地で見てきた光景を日本でも創りたい」、「自分たちが感じたものを多くの人に知ってもらいたい」という思いを募らせ、フットサル大会の開催を決めた。WorldFutは、これまでも一般のチームを集めた大会を開いてきたが、今回は男女混合の個人フットサルという大会形式を選んだ。
参加者に自分たちの目的を明確に伝えるため毎回必ずテーマを設けてきたが、このイベントでは「融和」を掲げた。そこには、「性別の壁を取り払う」、「始めて出会う人とフットサルを通して仲良くなってもらう」という目的があり、「フットサルやコンテンツを通して会場全体が一つになる瞬間を見たい」、「たくさんの人と感情を共有してつながりたい」という、主催者の願いも込められていた。
当日は100人超の参加者が集まり、経験者、未経験者を考慮した男女混合の12チームを即席で結成。6チームずつがグループA、グループBに分かれて予選リーグが行われた。「女性のゴールは2点」というローカルルールを設けたこともあり、グループBの「HUMAN×HUMAN」が、「チーム高校2年生を思い出そう」に11-2で圧勝する試合も出るなど、各試合で大きな盛り上がりを見せた。
続いて予選の結果に応じて各グループ1位と2位、3位と4位、5位と6位による順位決定トーナメントが行われた。優勝を決める上位トーナメントは拮抗した戦いが続き、準決勝で勝利した「オムライス」と「HUMAN×HUMAN」が決勝戦で激突。試合は2-2のまま決着がつかずPK戦へと突入すると、両チームのGKがファインセーブを連発してサドンデスにもつれ込んだが、7人目で明暗が分かれ、「オムライス」が見事、優勝を果たした。
「オムライス」には優勝トロフィーと大会に協力した株式会社LigaDivdeRTidaからユニフォームが11枚、株式会社イミオから「sfida」のフットサルボール9個が贈呈され、他チームにもそれぞれ、順位に応じた賞品が贈られた。
参加者たちは時間の経過とともに初対面という壁を乗り越え、チームには一体感が生まれていた。ピッチにたくさんの笑顔や歓喜があふれる光景はまさに主催者が目指したものだった。
今大会では、大会テーマを感じてもらうことを目的に、約100名を2チームに分けた全員参加のオリジナルコンテンツ「馬跳び」、「円送球リレー」も織り込まれていた。
「円送球リレー」は6人1組のチーム対抗戦。手をつないで円になり、ボールを運びながらコートを半周していく。どのチームもトップでゴールし賞品をゲットするために真剣勝負が繰り広げられていた。もちろん、なかなかうまくいかずに円からボールが飛び出しあたふたするシーンも見られたが、そんなところも含めて、みんなが協力し合いながら楽しんでいる光景は、まさに「ボール一つの持つ力」を感じるものでもあった。
最後のペアがゴールした瞬間、会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。笑顔が伝染し、気が付けば会場全体に一体感が生まれていた。主催者が、「チームを超えて様々な人と一体感を感じながら、一つの目標やゴールに向かって努力することを感じてもらいたい」と話していたことが体現されていた瞬間であり、そこには大会のテーマである「融和」が表現されていた。
また、WorldFut主催のイベントでは毎回、参加者にカンボジアのことを知ってもらうために展示コーナーを設けている。今回は「カンボジアの基礎知識」、「日本とカンボジアの教育の比較」というテーマのブースが設置された。
カンボジアには家庭の事情や教科書の不足といった問題があり、学校で勉強したくてもできていない子どもたちが大勢いる。今回初めてそうした実情を見聞きし、「カンボジアの教育については知らなかったが、深刻な問題であることを実感した」と日本との大きな違いを口にする参加者もいた。
発展途上国であるために、「彼らは生活に満足していないのではないか」という偏見を持たれることもある。ただ、ボール一つで楽しむことができるという、フットボールの魅力は万国共通のもの。そのことをリアルな体験として現地で感じてきたメンバーによる展示コーナーには、キラキラとした笑顔で暮している現地の子どもたちのパネル写真が飾られ、その写真とともに、同じように笑顔で記念撮影をする多くの参加者の姿があった。
それこそが今回のイベントを通じてWorldFutが創りたかったものであり、彼らのカンボジアへの思いが少なからず参加者に伝わったのではないだろうか。
学生団体WorldFut
「サッカー×国際協力 」 をテーマに活動する学生団体。2009年からカンボジアでの支援を始め、現在は、プレイベン州のスマオン村という農村で子どもたちの「サッカー選手になりたい!」 という夢を応援するために、サッカーを通じたサポートをしている。日本ではチャリティフットサル大会を中心としたサッカーに関するイベントを開催し、その収益金をカンボジアのスマオン村へのサポートに充てている。
サイトURL:http://www.worldfut.com/
Facebook:https://www.facebook.com/WorldFut
Twitter:https://twitter.com/worldfutja
山岸典(やまぎし・つかさ)
1993年6月8日生まれ、福島県出身。 日本大学国際関係学部に在学中、学生団体WorldFutに所属する。大学2年で通っていたスポーツマネジメントの専門学校で学ぶなかでフットボールライターを目指すと決意。現在はインターンやアルバイトなどでライターとしての活動の幅を広げている。横浜F・マリノスの熱狂的なファンでもあり、毎試合スタジアムに赴きオリジナルの試合レポート作成に取り組んでいる。