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2016年01月26日

3度目の優勝を遂げた丸岡ラックレディースが
中学生年代から女子フットサルを盛り上げる
第6回全日本女子ユース(U-15)フットサル大会

1月10日から11日、愛知県豊田市のスカイホール豊田で行われた第6回全日本女子ユース(U-15)フットサル大会は、丸岡ラックレディースが3大会ぶり3度目の優勝を遂げ幕を閉じた。日頃からサッカーとフットサルの両方に取り組む彼女たちの戦いぶりは、大会の価値を高めると同時に、女子フットボール界の明るい未来を照らす――。

Text and Photo by Yoshinobu HONDA

文=本田好伸

丸岡が3大会ぶり3度目の優勝

 第6回全日本女子ユース(U-15)フットサル大会が1月10日から11日、愛知県豊田市のスカイホール豊田で行われ、丸岡ラックレディース(北信越地域代表)がシュラインレディースFC(東北地域代表)を破り、3大会ぶり3度目の女王の座に輝いた。

 9地域の予選大会を勝ち抜いた9チームが3チームずつ3グループに分かれて1次ラウンドのリーグ戦を行い、各グループ1位と2位のうち成績上位1チームの計4チームがノックアウト方式の決勝ラウンドに進んだ。1次ラウンドから決勝戦までの戦いを踏まえると、今大会は今後の女子フットサル界に大きな影響を与えるのではないかと予感させられるものとなった。

フットサルを重視する丸岡が大会の価値を示す

 そのなかで、他チームの常に先をいく丸岡の戦いぶりが顕著だった。丸岡は2012シーズンから、女子フットサルのリーグ戦が盛んな東海リーグに参戦し、17日の今シーズンの最終節には天王山を制してリーグ2連覇を達成。さらに昨年の全日本女子フットサル選手権では準優勝に輝くなど女子フットサル界においてその存在感は増しているが、今大会には中学2年生以下の選手のみで臨んできていた(3年生は受験シーズンということが主な理由らしい)。
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 しかしながら、その戦いぶりはピヴォ当てを主体とする3-1のシステムをベースに戦うセットと、4人が連動する4-0(クワトロ)のシステムをベースに戦う2セットを併用するなど戦術的な要素はトップカテゴリーとそん色ない。とりわけ、3-1のピヴォ当てをメインに戦うセットのインパクトは絶大だった。

 丸岡には、現在高校2年生で、今大会にも過去3年連続で出場したフットサル日本女子代表の北川夏奈と高尾茜利という突出した選手を輩出しているが、その北川を彷彿とさせるピヴォの山川里佳子は、田中悦博監督も「能力は北川以上かもしれない」と期待を寄せる。山川自身も、「北川さんに憧れていて、そんな選手になれるように練習から真似をしている」と、身近にいる偉大な先輩の背中を見ながら日々成長を遂げ、今大会でも優勝に大きく貢献した。
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 丸岡にはその他にも、体格は小柄ながらも、キャプテンとして、クワトロセットの核として大車輪の働きを見せた池内天紀など、非凡な才能を見せる選手であふれていた。サッカーとフットサルの両方に取り組みながら高みを目指す彼女たちが、3年前の2連覇を達成したときとは異なるメンバーで結果を残したことは、今大会の価値やフットサル自体の価値を周知するという意味でも少なくない影響を与えたと言えるだろう。おそらくまた、このメンバーのなかからフットサル日本女子代表選手が現れるに違いない。

亡き総監督の思いを胸に飛躍したシュライン

 シュラインレディースも今後の期待が高まるチームだった。丸岡と同様、主力のほとんどが中学2年生というメンバー構成ながらも初出場で決勝戦まで上り詰めた。昨年の全日本女子フットサル選手権に出場したメンバーも多く、積み重ねてきた経験を、今大会でも存分に発揮した。そのなかでも、小山内あかり、櫻庭琴乃のパフォーマンスは今大会でも突出し、4試合で小山内は5得点、櫻庭は9得点をマーク。田澤賢一監督も、「サッカーとフットサルではボールの扱いは異なるが、2人はどちらもこなせる」と太鼓判を押す逸材だった。
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 また、彼女たちは今大会でもう一つ大きなものを手にした。2015年3月に、クラブを支え続けてきた成田栄一総監督が他界し、大会前から「恩返しの意味も含め、悲願の決勝ラウンドに進出して成田監督の長年の思いに応えたい」(田澤監督)と、彼女たちは左腕に喪章を巻いてプレー。そうした決意を胸に秘め達成した準優勝だった。「もちろん優勝したかったが、そもそも今大会に青森県から出場するのは初めてのこと。よくここまで頑張ったし、選手に感謝したい。成田監督も、『東北では勝てる』という自信を持っていたが、それでも『全国は別格』という意識があった。そうしたなかで準優勝できたこと、『全国に通用するチームができた』とみんなで報告に行きたい」(田澤監督)と大会を後にした。
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存在感を示し、今大会を盛り上げたチーム

 ベスト4に進出したFCヴィトーリア(関西地域代表)やクラブフィールズ・リンダ(北海道地域代表)も、過去の大会でもそうであったように存在感を示した。クラブフィールズ・リンダは竹内千璃を中心に据えながらも、全選手の総合力が高く、戦術意識と統率の取れた連係を披露。1次ラウンドの丸岡戦では、最後の最後までどちらに転ぶか分からない熱戦を演じた。
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 2大会連続でピッチに立つ選手が多いヴィトーリアも、キャプテンの渡辺響や平田ひなの、川名みのり、浅野綾花、齋藤桃花、真木悠花など、個人能力と守備意識の高さが際立った。丸岡との準決勝では前半を1-0でリードするなど、相手を大いに苦しめた。
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 そしてもう1チーム、1次ラウンドで敗れたものの、結成2年目にして初出場を果たしたレインボー垂井U15レディース(東海地域代表)も大会を盛り上げた。戦いは攻撃に特化し、ドリブルで果敢に勝負する選手の能力は高く、とりわけ前川望愛が相手陣内を何度も切り裂いた。伊藤隆文監督も「経験不足から失点が多く勝てなかったが、中学2年生や小学生の選手もいるので、引き続きやっていきたい」と意欲を見せていただけに、今後の活動にも注目が集まる。
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前進していく女子フットサル

 大会を重ねてきたことで、6回目(プレ大会を入れると7回目)の今年は継続の成果を見て取れるものとなった。特に、サッカーのスキルをどのように置き換えてフットサルのピッチでプレーするのか、様々な工夫やトレーニングを積んで臨むチームが増えていると感じる。それは、普段はサッカーをメインに取り組みながらも、指導者や選手の間でフットサルをプレーすることの価値や理解が進んでいるということの証明でもある。いわゆる“エース頼み”という個人のタレントのみで戦うのではなく、組織で戦うというシーンも多い。選手たちは、「フットサルの経験をサッカーでも生かしたい」と口々に語り、その相互作用はこの先もますます重要視されていくだろう。と同時に、「フットサルで日本代表になりたい」という選手も増えている。

 女子においても、サッカーとフットサルを両立させながら、選手それぞれに合った舞台で高みを目指すということが進んでいるように感じる。「フットサルをオリンピック競技にしたい」(田中監督)と願い活動を続ける稀有なチーム、丸岡を筆頭に、アンダーカテゴリーを含めた女子フットサルは大きく前進していくだろうと、そんな予感を抱かせる大会となった。
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本田好伸(ほんだ・よしのぶ)

1984年10月31日生まれ、山梨県出身。 日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)

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