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2015年10月23日

副編集長・加藤未央のコラム
『パンツを右足から穿くように』
「演出でリーグの価値は変えられる」

副編集長・加藤未央が自ら筆を取る本コラム、その名も『パンツを右足から穿くように』。先日、加藤未央がFリーグ報道官に就任し、リーグのあらゆる側面を伝え、発展の一助となるべく新しい試みを進めていく。そんな折に出会ったのがアイスホッケー。フットサルとアイスホッケーには共通項も多く、参考にすべきことが多い。観客に「また来たい」と思わせられる付加価値こそ、考えなければいけないテーマだ。

text by Mio KATO

文=加藤未央

 先日、私にとって未知のスポーツ、アイスホッケーの試合観戦に日光まで行ってきた。
 北千住駅から出ている東武スカイツリーラインに乗って東武日光駅まで行き、そこからタクシーで日光霧降アイスアリーナまでという約2時間半の道のりはちょっとした旅行のようだった。そもそも当日仕事の現場から北千住まで1時間ほどを要したので、移動時間だけで考えると3時間半くらい掛かったことになる。けれど北千住から東武日光までの2時間の間は、ひたすらパソコンを抱えながら仕事に集中できたので、けっこう充実した移動時間だった。このルートで行く人には、パソコンか本を持って乗車することをおすすめする。

 この日観戦したのは、日光市をホームタウンとする「H.C.栃木日光アイスバックスvs日本製紙クレインズ」のカード。さて、なぜ急にアイスホッケーを観に行くことになったのかというと、きっかけは私がFリーグの報道官に就任したことにつながる。Fリーグ報道官としての具体的な活動はこれから協会側と力を貸してくれる人たちといろいろな話し合いをしながら進めていきたいと思っているなかで、「ワールドサッカーキング」や、業界最大規模のWEBサイト「サッカーキング」などを手掛ける株式会社フロムワンの岩本義弘社長より、「未央ちゃんにとって良いインプットになると思うよ」というありがたいお声掛けをいただいたからだった。アイスバックスはアイスホッケーで国内唯一のプロチームであり、チームのシニアディレクターにセルジオ越後氏が就任されているという、異色のチームなのだ。

 アイスバックスが所属しているアジアリーグアイスホッケーは、日本から4チーム、韓国から3チーム、中国から1チーム、ロシアから1チームの計9チームが参加している。

 なぜ岩本氏が私をこの試合に誘ってくれたのか。それはこのアイスホッケーとFリーグとでは似ている点が多くあるからだった。
 まず、屋内で行われるスポーツであること。
 次に試合数。レギュラーシーズンはアジアリーグアイスホッケーが216試合、Fリーグが198試合行われる。
 そしてチケットの価格帯。両者ともに平均すると1500~2500円くらいの間に設定されている。一番安いのは、王子イーグルス(アジアリーグアイスホッケー)の大人・自由席の当日券1300円で、一番高いのはバルドラール浦安と府中アスレティックFC(ともにFリーグ)の大人・アリーナ席の当日券3000円(スタンド席は浦安が2000円、府中が2500円)となっていた。
 座席数もそれぞれリンクとピッチを囲む座席数なので、おおよそ2000人前後の収容人数になる(最も収容人数が多いのは最大約6000人を収容可能な小田原アリーナ)。
 観客動員数も、アイスホッケーの詳細な過去のデータを入手できなかったので正確な数字で比較はできないけれど、公表されている断片的なデータを見るとほぼ同じような数字だ。

 リーグの規模感がこれだけ似ているという前提を知った上で観たアイスバックスのゲームは、私の目にとても魅力的に映った。そこには「莫大な予算を投入しなくても観客を魅了する演出」がふんだんに盛り込まれていたからのように思う。

 まず、試合前。選手が入場する前から会場が暗転し、会場中が光と音の演出に包まれる。それと同時に観客のテンションも一斉に上がって拍手と歓声が飛ぶなか、デジタル映像がリンクに映し出され会場の雰囲気が一体となる。私も思わずその空気に飲み込まれてしまった。

 そのまま選手の入場になるのだけれど、この入場の方法もめちゃくちゃカッコ良いのだ。有名なタレントさんを呼ぶわけでもなく、予算を掛けた豪華絢爛な演出でもなく、光と音のみでここまでカッコ良く演出できることにびっくりした。その演出の効果もあって選手一人一人がさらにカッコ良く見えるのだから、Fリーグのクラブチームからたまに聞く「選手の価値を高めたい」という意味ではとてもマッチした演出なのではないかと思いながら見入ってしまった。試合が止まる短い時間やハーフタイム中にも観客の目線を一瞬でも外させないような演出や参加型のイベントが織り込まれていて、観客がよそ見をするような隙はなかった。

 結果、私はもう一度アイスバックスの試合を観たいと思っている。日光霧降アイスアリーナで、お金を払ってあの雰囲気で盛り上がる試合を体感したいと思っている。アイスホッケーに何も知識のない私にそう思わせたアイスバックスの演出勝ちだった。

 試合はもちろん面白いものだし、そこはFリーグにも共通して言えること。試合だけじゃなく、会場にいることに対する付加価値を再考する時だろう。演出一つで、リーグの価値は変えられるのだ。





加藤未央(かとう・みお)

1984年1月19日生まれ、神奈川県出身。 2001年に「ミスマガジン」でグランプリを獲得し、05年には芸能人女子フットサルチームにも所属。07年から09年まで「スーパーサッカー」(TBS)、09年から15年まで「スカパー!」 のサッカー情報番組「UEFA Champions League Highlight」のアシスタントを務め、Jリーグや海外サッカーへの知識を深めた。現在は、ラジオ番組「宮澤ミシェル・サッカー倶楽部」などにも出演し、フットサル専門誌「フットサルナビ」でも連載中。15年4月からオフィシャルブログ「みお線」もスタートした。http://ameblo.jp/mio-ka10/

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