ユース年代におけるフットサルの頂点を決める大会「全日本ユース(U-18)フットサル大会」が20日に宮城県で開幕。各地域予選を勝ち抜いた16チームが4チームずつ4グループで1次ラウンドを戦い、上位8チームによる決勝ラウンドで日本一を決する。ユース年代のフットサルは、この先の日本フットボール界の行方を左右するという意味でも重要な位置付けにある。2年目を迎える今大会は、果たしてどんな結末が待っているのか――。
Text and Photo by Yoshinobu HONDA
文=本田好伸全日本ユース(U-18)フットサル大会が20日に開幕。第2回目を迎える今大会は、宮城県のゼビオアリーナ仙台と仙台市体育館の2会場で3日間にわたって開催される。
フットサルにおけるU-18年代は、いまだ発展途上にある。これまでも、日本フットサル連盟が主催するU-18フットサルトーナメントや各種民間大会などは存在したが、2014年に日本サッカー協会(JFA)が主催する今大会が創設されたことで、JFAが主催するジュニア年代、U-15年代男女、U-18、大学生年代、トップ男女とすべてのカテゴリーで、各地域の代表によって日本一が争われる大会が整備されたことになる。
これまでは、中学生までフットサルを続けてきた子どもの受け皿となる高校生年代の試合機会が少なかったことも影響し、フットサル日本代表へとジャンプアップする“10代戦士”は皆無だった。日本国内からトップアスリートの輩出を考えるのであれば、南米や欧州のトップサッカープレーヤーがそうであるように、ジュニア、ジュニアユース年代でのフットサル経験を経てサッカー、フットサルのトップへと進んで行く道筋を整えることが急務である。そのために今大会は、今後の日本フットボール界を見据える上でも、大きな価値があるだろう。
2年後の2017年にAFCユース(U-20)フットサル選手権が創設されることを受け(アジア予選は2016年に開催予定)、今年からU-18フットサル日本代表が組織されることが決まった。ミゲル・ロドリゴフットサル日本代表監督の下でコーチ兼通訳を務めてきた小森隆弘氏が監督を務め、今大会に臨む高校生年代の選手にも大きな期待を寄せる。
「フットボールには、サッカーもフットサルにも共通の原理原則のベースがあり、年代が上がるごとにそれぞれの競技特性が大きく分かれていく。そのなかで、より緻密なプレーがものを言い始めるのがこの年代であり、本当の意味でフットサルの競技特性が出てくるので、今からフットサルに取り組む選手はそうした原理を理解してもらいながら、フットサルの特性にも触れてもらいたい。それが引いては、より下のカテゴリーにとっても、ベースがいかに大事なのかということが浸透し、底辺が固まっていくことにつながると思う」
さて、2回目となる今大会は、どのような見どころがあるだろうか。
ちなみに前回大会は、Fリーグで頂点を走り続ける名古屋オーシャンズの育成組織である名古屋オーシャンズU-18がフットサルのノウハウを生かした戦いで際立つなか、テクニックの高さを誇る聖和学園FCがじわじわと存在感を示していた。彼らは1次ラウンドで名古屋に大敗を喫しながらも、大会期間中に、「このピッチでどう戦うか」を考え、変貌を遂げ、フットサルに順応して、名古屋とのリベンジマッチに臨んだ決勝では、彼らの最大の武器であるテクニックを存分に発揮して初代王座をつかんだ。
そうやって考えると、いまだ成長途上の高校生年代の戦いぶりは、1日ごと、試合ごとに大きく異なってくるだけに、最後の最後まで目が離せないだろう。
そのなかでも、FC聖和学園、SC聖和学園、聖和学園高等学校フットサル部と“3チーム出し”を果たした聖和勢は最右翼だ。前回大会で培った経験を生かし、今年も旋風を巻き起こせるだろうか。
また、名古屋を破って東海地域代表の座をつかんだエスパッソU-18にも注目が集まる。フットサル大会への参戦歴もあり、何よりも“サッカー王国”静岡を代表するチームとして、意地を見せるに違いない。他にも、2年連続出場のクラーク記念国際高等学校や初出場ながらもダークホースとなるPSTCロンドリーナU-18は、日頃からフットサルに特化したトレーニングを積むチームだけに、“一日の長”を生かした戦いで勝ち上がっていくのだろうか。
さらに、岡山県作陽高等学校、サンクFCくりやまU-18、帝京長岡高等学校サッカー部も2年連続出場となり、昨年2年生だった選手が再びメンバーに名を連ねているケースも見られる。そう考えたときに、個人的に今大会で最も注目したいのは帝京長岡だ。前回大会は、シンプルながらもスピードがあり、フットサルのピッチを生かしたパスワークと優れた個人技術で輝きを放っていたが、その中心にいた小林拓夢、石田健太郎、高橋響といった2年生の数選手が、今大会も再び参戦してきている。
古沢徹監督は昨年、「たぶん、あと数年したら高校サッカーのチームがフットサルのチームには勝てなくなってくると思うからこそ、今がチャンス。(主力の2年生が最上級生となって来年挑めるため)もう一回チャンスがある」と話していたが、そのチャンスをつかみ取るために、再びこの舞台まで登り詰めて来た。
さらに、今年1月に行われた全日本ユース(U-15)フットサル大会で日本一を手にした長岡JYFCボルボレッタのメンバー数人も帝京長岡に進学して今大会にメンバー入りしているだけに、“勝者のメンタリティ”を持つチームの躍進を予感せずにはいられない。
ゼビオアリーナ仙台という、総座席数4009、センターマルチディスプレイを擁する世界的有数のアリーナでの大会が、彼らの大会に華を添えるだろう。果たして、2代目の王者となるのは、どのチームか――。
■大会名称:第2回全日本ユース(U-18)フットサル大会
http://www.jfa.jp/match/alljapan_youth_u18_futsal_2015/
■開催期間:2015年8月20日(木)~2015年8月23日(日)
■会場:宮城県/ゼビオアリーナ仙台、仙台市体育館
本田好伸(ほんだ・よしのぶ)
1984年10月31日生まれ、山梨県出身。 日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)