コラム  サッカー  ディディエ・ドログバ  パンツを右足から穿くように  フットサル  ルイ・ヴィトン  加藤未央  戦術  森岡薫 
2015年07月24日

副編集長・加藤未央のコラム
『パンツを右足から穿くように』
「洋服選びは細かい戦術なり」

副編集長・加藤未央が自ら筆を取る本コラム、その名も『パンツを右足から穿くように』。友人に付き合ってウインドウショッピングに出掛けて感じた、「ルイ・ヴィトン=ディディエ・ドログバ」という視点。強烈な個性とは、組織における特異なバリエーションとなる。服の好みと同じように、フットボールの好みのスタイルを探すことは、競技を楽しむ大きなポイントなのかもしれない。

text by Mio KATO

文=加藤未央

 先日、自分にどんな服が似合うのかよくわからないという男友達にくっついて、休日のみなとみらいへ洋服選びに行ってきた。普段から時々、父と一緒に買い物へ出掛けるので、メンズのアイテムは見慣れている自信がちょびっとアリな私にもってこいの役目だと思って自信満々で行ったものの、実際にお店へ入るやいなや、友人を前に頭の中のイメージが真っ白なことに気付いて焦ってしまった。

 なにせ私の父は常にひとクセのある服を着るので、普段から見るアイテムもちょっと変わった物が多い。そういうテイストと比べると、その友人は真逆をいくようなスマートでキレイめなイメージのタイプ。私の中にあるその種の引き出しが少ないことに気付いた頃には時すでに遅しで、思っていたよりも難航する洋服選びと同時に、女の子のアイテムの種類の多さを痛感したのだった。

 レディースはトップスもボトムスも素材、デザインともにバリエーションが豊富。それに加えてワンピースのように一枚でサラッと着れちゃう物もあるので、いろんなスタイルを選ぶことができる。でもメンズのアイテムって、例えばトップスでいうと大きく分けてTシャツ、シャツ、ポロシャツ、ニット系の4種類。しかもベースの形はほとんど変わらないT字のライン。ボトムスに限っては長いか短いかだ。その中からその人に合った個性を出しつつバリエーションを作るには、その数少ないベースから素材やデザイン、色などで変化を付けていくしかない。

 休日の人に溢れたみなとみらいで、友人をあちこち連れ回しては似合いそうなものを片っ端から合わせてみたり試着してもらったりしていたら、あっという間に半日が経ってしまった。とはいえ、私は洋服が大好きなので見ていてとても刺激になったし、彼に似合う洋服やバッグ、靴を発掘するのは楽しかった。それに嫌な顔ひとつしないで根気強く付き合ってくれた友人の器の大きさに脱帽である。

 ところで、同じ型からのバエリエーションといえば、サッカーやフットサルのフォーメーションもそれに似ている気がする。例えばサッカーの最終ラインの形は基本的に3バックか4バックの2択だし、フットサルはフィールドプレーヤー4人がボックス、ダイヤ、3―1の形をとるのが基本だろう。ベースはいたってシンプルで種類もあまりないのに、クラブによってものすごくたくさんのバリエーションが生まれているのは、監督の戦術のディティールだったり選手の能力や特性の違いがあるからだ。

 チームの個性、バリエーションという視点で強烈な選手といえば、私の中で真っ先に浮かぶのはコートジボワール代表のディディエ・ドログバ。あの破壊力満点のシュートや強靭なフィジカルは、どのチームでプレーしたところで変わらない。ドログバがピッチに立つと一気に試合の流れを持って行くし、「戦術・ドログバ」といわんばかりの存在感を見せ付けてくれる。

 それは、ルイ・ヴィトンのモノグラムのアイテムが形を変えれども同じ印象を与えるのととてもよく似ている気がする。強烈な印象のあるモノは、同じデザインや戦術をかたどるなかでの個性となり、バリエーションの一つとなる。

 フットサル界にも「戦術・◯◯」といったチームの特徴になる選手がいる。その代表格でいうと、名古屋オーシャンズの森岡薫選手だろう。ベースのフォーメーションとなる3パターンのいずれかに森岡選手が入ると、足技を取り入れたボール運びやドルブルからの突破、一瞬何が起きたのか分からないくらいのスピードのシュートなど、他では真似のできない強烈な個性になっていく。

 自分の服の好みがあるのと同じように、フットボールにおいても好みのスタイルを探してみるのも面白いかもしれない。サイドからのアタックが好きなのか、ビルドアップの攻撃を構築していく感じが好きなのか、はたまた縦への華麗なるパスが好きなのか……。そのなかには自分が持つフットボールへの細かいこだわりが実は意外に多く盛り込まれている。

 彼氏にするにも試合を観るにも、“自分のセンスに合っているほうがいい”に決まっている。まずはそれを知るところから始めてみようかな、と思うわけである。さて、私の好みやいかに。





加藤未央(かとう・みお)

1984年1月19日生まれ、神奈川県出身。 2001年に「ミスマガジン」でグランプリを獲得し、05年には芸能人女子フットサルチームにも所属。07年から09年まで「スーパーサッカー」(TBS)、09年から15年まで「スカパー!」 のサッカー情報番組「UEFA Champions League Highlight」のアシスタントを務め、Jリーグや海外サッカーへの知識を深めた。現在は、ラジオ番組「宮澤ミシェル・サッカー倶楽部」などにも出演し、フットサル専門誌「フットサルナビ」でも連載中。15年4月からオフィシャルブログ「みお線」もスタートした。http://ameblo.jp/mio-ka10/

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