石田太志 
2014年12月01日

フットバッグで世界一に輝いた
石田太志という唯一無二のプロプレーヤー
「フットバッグを日本の文化に――」

卓越したスキルとスピード、芸術性が見る者を魅了するフットバッグ。03年、ペプシコーラのおまけに付いていたことで馴染みのある人も多いのではないだろうか。フットバッグは国内外で数多くの大会が開かれ、2014年、その最高峰の舞台である世界大会で頂点に登り詰めた日本人がいた。石田太志、30歳。世界で唯一のプロフットバッグプレーヤーである彼は、日本にフットバッグを根付かせようと、その足に魂を込め続けている。

text and photo by Yoshinobu HONDA

文=本田好伸

アジア人初の世界一

 2014年8月、フットバッグ界に激震が走った。石田太志が、世界大会「World Footbag Championships 2014」のShred30部門でアジア人で初の世界一に輝いた。

 プレーすることは、風を切り裂くという意味で“シュレッド”、選手は“シュレッダー”と呼ばれる。日本では競技人口も少なくあまり馴染みはないが、欧米では街中で気軽に楽しまれ、世界中で600万人の愛好者がいるとされる。競技における日本と世界との力差は顕著で、世界王者になることは、例えば陸上で日本人が金メダルを獲得するようなもの。石田自身、「世界のトップ10入りが目標」と考えていたくらいであり、世界中のシュレッダーが石田の快挙に驚愕したのだ。

順風満帆のプロ生活

 競技と出会ったのは03年。スポーツショップの店内で流れるフットバッグの映像に衝撃を受け、大学1年の石田は、一気にハマった。技を磨き、06年には日本一を決める大会「JAPAN FOOTBAG CHAMPIONSHIPS」のフリースタイル部門で優勝。早くもトップシュレッダーの仲間入りを果たした。その後、株式会社コム デ ギャルソンに入社し、アパレル業界で働きながら深夜に練習する生活を続けていたが、競技への熱が冷めずに11年に退職、独立する道を選んだ。そしてこのチャレンジは今、確実に実を結んでいる。
 現在は、木村和司がプロデュースする「Sports Jungle10(スポーツジャングル テン」やバディスポーツクラブ世田谷でスクールを開校し、公園などで個人レッスンも行う。また、サッカーショップKAMOの全20店舗やフットサルショップRODAにフットバッグを卸すなど、生産も手掛ける。さらに、Jリーグの横浜FCやFリーグのフウガドールすみだのホームゲームでパフォーマンスを披露するなど、月に10回前後のイベントにも出演。世界で唯一のプロシュレッダーとして、その地位を築き上げている。

フットバッグを文化に

 フットバッグは1972年に、リハビリトレーニングとしてアメリカで発祥。その起原は、実はフリースタイルフットボールよりも古い。競技の特性上、股関節や体幹が鍛えられるため、あらゆる種目からも注目を集め、石田自身、空手や野球、陸上の選手に指導する機会も多い。もちろん、サッカーやフットサルのスキルアップも期待できる。子どもから大人まで男女問わずに需要があり、自宅でも簡単に取り組める一方で、技の種類は2000を超え、トップレベルのシュレッドはアクロバティックかつスペクタクルであり、見る者を魅了する奥深さを持つ。フットバッグは、実用的で、魅力的なスポーツなのだ。

 石田は競技者として日本のトップを走りながら、競技を普及させ、多くの人に楽しんでもらい、ゆくゆくはフットバッグがカルチャーとして国内に根付くことを夢見ている。「自分の教え子が世界一になったらうれしい」という思いもある。小さなバッグを扱うこの競技には無限の可能性が広がっている。石田は先駆者として、世界中に大きな風を巻き起こしていく。

石田太志(いしだ・たいし)
1984年4月5日生まれ、神奈川県横浜市出身。プロフットバッグプレーヤー。
高校までサッカーを続け、2003年の大学1年時にフットバッグと出会う。06年、10年、12年に日本一に輝き、世界大会にも04年から5回出場。2014年に「World Footbag Championships」のShred30部門(※30秒間で多くの技を繰り出し、難易度に応じたポイントを加算、合計点で競うカテゴリー)に出場しアジア人として初の世界制覇。世界で唯一のプロフットバッグプレーヤーとして、競技の普及を目指して精力的な活動を続けている。
オフィシャルサイト:http://www.taishiishida.net

本田好伸(ほんだ・よしのぶ)
1984年10月31日生まれ、山梨県出身。
日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)





本田好伸(ほんだ・よしのぶ)

1984年10月31日生まれ、山梨県出身。 日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)

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