FOOTART  FOOTARTIST JUN  フットアーティスト  フットアート  海街diary  葉山  鎌倉 
2015年06月16日

《FOOTARTIST JUNの個展を訪問》
フットボールを愛してやまない男の“一人同窓会”
「ボールに人生を教えてもらった」という偽りのない思い

6月12日から14日の3日間にわたって開催されたフットアーティスト ジュンさんの個展「FOOTART GALLEY 2015」の初日にお邪魔した。12日は話題の映画「海街diary」の公開前日ということもあって、朝からニュース番組に“美人4姉妹”が登場し、鎌倉の街並みが映し出されていた。そんな鎌倉に、「旬だなあ」なんて思いながら出掛けていくと、鎌倉駅から徒歩1分の場所に、お目当ての個展会場があった。

Text and Photo by Yoshinobu HONDA

文=本田好伸

 ドアを開けると、飛び切りの笑顔でジュンさんが迎えてくれた。思い返せば、出会ってからまだ半年足らずにもかかわらず、それを感じさせない雰囲気をまとっているのが、この人である。「フットボールが好きすぎた」がゆえに、それを表現する活動を始め、“サッカー王国”ブラジルに行く夢を描き、そしてそれを実現させてしまった。

 写真を通じてフットボールの瞬間を切り取り、メッセージを発信し、ヘンプで作ったアクセサリーを通じて想いを人へとつなげていく。フットボールを愛するこの人は、フットボールを手段として、人の輪を描き、仲間を増やし、笑顔を連鎖させている。今年で3回目を迎えた個展も、そういった思いが共有されるような空間が広がっていた。

 ブラジルやタイなど、これまでの作品が、ジュンさんのストーリーに沿って展示されていた。写真やアクセサリーはもちろん購入可能で、お気に入りの作品を見付け、オーダーするたくさんのお客さんの姿があった。「手渡し」にこだわるジュンさんはこれまで、基本的にはネットでの販売をしてこなかった。イベントや個展など、直接足を運んできてくれた人との触れ合いを大切にしている。
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 今回の個展では、お手製のスライドショーも披露された。「ボールを蹴っていなければどんな人生だったのだろう」というメッセージで始まるその映像は、個展でも飾られている写真とともに、音楽とメッセージで構成され、ジュンさんにとっての一つひとつの出会いや喜び、感謝の気持ちが形にされたものだった。「ボールに人生を教えてもらった」というセリフは、ジュンさんが心から感じている嘘偽りのない思いなのだろう。

「フットアーティスト」という聞きなれない名称も、作品の数々を見ることで、スッと腑に落ちる。ジュンさんは、フットボールを表現するアーティストであり、何か既存のものに囚われるのではなく、自らの道を突き進んでいく人なんだと。「好き」という根底にある感情から、自身を突き動かす欲求が生まれ、実際にブラジルへの旅を結実させ、個展を開いて、多くの人の心を揺さぶる作品を発表し続けている。「好きなこと」をやり切ることで、いかに自分らしい人生を送れるかということを示し続けている存在なんだと思う。

 ジュンさん自身は、この3日間の個展を、こんなふうに表現した。「一人同窓会だ」、と。

「自分のことを昔から知っている人、大人になってから出会った人、そういう人が個展をきっかけに、足を運んでくれる。フットアーティストというよりも、『秋山淳』という一人の人間に会いに来てくれる」。友人からすれば、幼い頃からボールを追い掛け回し、一緒になって遊び通した仲間の一人が個展を開くなんて、相当エキサイティングなことに違いない。「おまえ今は何してんの?」、「俺、今こういうことやってんだよね」なんて個展に招待できたら、それはテンションが上がるだろう。
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 まだこの場にいたいと、何となく名残惜しい気持ちを抱きつつ、個展を後にすることにした。握手をかわして会場を離れていくと、笑顔で手を振りながら見送ってくれるジュンさんの姿があった。そして僕は、「アーティスト」であり、「秋山淳」であるジュンさんの、「フットボール愛」を改めて感じながら、JR横須賀線を北上して帰路に着く。「そういえば、“海街”を全く感じてないや」と少しだけ残念に思いながら、でもまぶたを閉じれば浮かんでくる、フットボールな光景でそんなことも忘れてしまい、気が付けば、最寄駅に着いていたのであった(ただ、寝てただけ……か?)。「寝落ち」ではなく、「余韻を楽しめる個展だった」と言いたかったのだけれど。

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 そうそう、個人的にこの個展で感じ入った瞬間が二つほどあった。それは、ジュンさんの娘さんが描いたという作品と、家族より届いたというお手製のフラワーアレンジメント。かつてジュンさんは、「奥さんの後押しがあったからこそブラジルに行けた」と語っていた。家族のサポートがあって初めて自分の好きなことができるという感謝の思いは、常々口にしている。そういうジュンさんの感謝の気持ちが伝わっているからこそ、奥さんや娘さんが、精いっぱいバックアップしているんだろうなと、フットボールを通じた家族愛みたいなものを感じて、ほっこりとした気持ちにさせてもらったのだった(それに、小学校低学年の娘さんの才能がハンパじゃない。すで相当なアーティストですね……)。
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FOOTARTIST JUN
1980年生まれ、神奈川県出身(湘南生まれ、葉山在住)。フットボールとアートを融合させた世界観を創り上げ、写真とヘンプの様々な作品を通じて、夢を語り続けること、夢を追い掛けることの大切さを発信するフットアーティスト。2012年にサッカー王国・ブラジルに行くことを夢見て本格的に活動を始め、13年12月にその夢を実現。創作の幅を広げて活動を続ける。2015年6月12日から3日間、鎌倉・カトレアギャラリーにてフットボールを愛するすべての人に捧げる個展を開催した。また、11月21日からは自身初の海外個展をタイで開く。
www.footart-jun.com





本田好伸(ほんだ・よしのぶ)

1984年10月31日生まれ、山梨県出身。 日本ジャーナリスト専門学校卒業後、編集プロダクション、フットサル専門誌を経て、2011年からフリーランスに転身。エディター兼ライター、カメラマンとしてフットサル、サッカーを中心に活動する。某先輩ライターから授かった“チャラ・ライター”の通り名を返上し、“書けるイクメン”を目指して日々誠実に精進を重ねる。著書に「30分で勝てるフットサルチームを作ってください」(ガイドワークス)

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