それまでの世界記録は10秒。セリエAで記録されたものだという。
世界中のサッカーのプロリーグにおける“最速レッドカード”記録のことだ。
つまり、(負傷を除き)いかに早くピッチを去ったのかを示す不名誉なものだ。
その新記録を樹立してしまったのは東京ヴェルディの菅原智(現ヴェルディユースコーチ)だ。
その瞬間は2009年4月、J2第8節東京ヴェルディvsサガン鳥栖で起こった。
にわかには信じ難い。あまりにも早すぎるから。
そりゃそうだろう。たとえばファンの家庭でのこんなやり取りが想像できる。
夫 「よし、今日もテレビでヴェルディ応援するぞ」
妻 「ええ、楽しみね。まもなくキックオフよ」
夫 「そうだ、悪いけどビール取ってきてくれないか」
妻 「ええ、いいわよ。すぐ戻ってくるわ」
(ピーーーッ! ※キックオフの笛)
(10秒後)
妻 「さっ、持ってきたわよ」
夫 「………」
妻 「あなた、どうしたの!? ……ってえっ、ス、スガ、何があったのよ」
夫 「レッドカード、退場さ」
妻 「えっ、う、うそよ。だって今試合が始まったところじゃない」
夫 「俺はおまえにはうそはつかない。これまでも、これからも。今だってそうだ」
とまあ、寸劇はさておき、一番信じ難いのは本人だろう。
味方も相手も監督もコーチもスタンドの観客もみんなざわめく中で、凛とする審判。
あの瞬間、レッドカードを迷わずに出せる審判は、さすがだ。
そして、10人対11人の(ほぼ)90分の戦いが再開された。
そうそう、映像では言ってないですが、「9秒」とのことでした。
文=ROOTS編集部